2025年末から、晴海エリアで成約坪単価の動きに変化が見られるようになってきました。いま湾岸エリアで何が起きているのか、湾岸エリア専門の不動産仲介·FJリアルティ藤田氏(ふじふじ太)とマンションアナリストのらえもんが緊急対談しました。
のらえもん:ふじふじ太さん、こんにちは。本の出版おめでとうございます。
ふじふじ太:ありがとうございます、大変でしたー!
のらえもん:今日は2人で晴海フラッグ、晴海エリア、そして湾岸エリア全体を俯瞰したお話をしたいと思います。まずは、成約価格と買い手の引き合いを総合して、天気予報に例えてみましょうか。日経新聞の景気予報みたいな感じで。
ふじふじ太の「湾岸天気予報」
のらえもん:今回の主役、晴海エリアはどうですか?
ふじふじ太:晴れ……ではないですね。晴海フラッグあたりは、雨模様と言わざるを得ない感じです。
のらえもん:雨ですか。他の晴海タワマンは?
ふじふじ太:はい、晴海エリアは全体的に総じて天気は下り坂です。晴海フラッグで出てきた雨雲が、徐々に近隣エリアにも広がってきている印象です。ただ、駅近のドゥトゥールからは晴れ間がたまに差し込んでます。
のらえもん:視線を俯瞰して、エリアを広げてみましょうか。よく比較対象にされる豊洲や勝どき・月島はどうですか?
ふじふじ太:豊洲は薄曇りです。晴れ間が見える時もあるけど、薄い雲がかかってきたかなと。勝どき・月島は曇り。ちょっとどんよりしていて、場合によっては小雨が降り出すかも?という感じです。
のらえもん:江東区海側の有明と東雲は?
ふじふじ太:有明は基本晴れですけど、ちょっと雲がかかってきたかな、というところ。東雲も同じで、基本晴れだけど少し陰ってきたかな、という感じですね。
のらえもん:なるほど、特に東雲はまだ物件価格が比較的お手頃ですからね。買い手側の判断軸はやっぱり価格なのでしょうか?
ふじふじ太:そうですね、価格ですね。最後はそこに行き着きます。買い手の心理の変化もあり、リスクヘッジでグロスの意識が高まってきているように感じます。
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なぜ晴海が一段弱いのか:2024年問題がいま来ている
のらえもん:晴海が他の湾岸エリアと比べて少し弱く見える理由って何なんでしょうね?
ふじふじ太:シンプルに供給(売り物件増加)のタイミングが重なっているんです。売り出しが一時的に集中していて、結果的に需給バランスが大きく崩れている状態です。誰かが悪いという話ではなく、構造的に今そうなっている、ということですね。
のらえもん:我々が2022年頃に話していた「2024年問題」が、いま来てるってことですね。当時の2024年問題は、晴海フラッグへの入居組が一斉に旧宅を売り出すんじゃないか、在庫が飽和するんじゃないかという話でした。ただ2024年時点では旺盛な需要もあって需給は崩れず、むしろ価格は上がっていった。今回は、スカイデュオへの住み替えで旧宅を売る必要のある方たちの動きが重なったのと、スカイデュオ自体の即転売組が一斉に売り出した、そこに外部環境の影響が同時に出た、という感じですね。
ふじふじ太:そうですね。スカイデュオへの住み替え組は一定数いらっしゃいます。今、弊社で捕捉している湾岸エリア全体の募集数が963戸、うち晴海エリアが約423戸。スカイデュオの募集件数は153で、全戸数1,500に対して約10%です。
のらえもん:10%!ちょうど横浜フロントタワーも似たような局面がありましたね。あそこも1年以上かけて在庫がはけて、そこから価格が上向いていった。スカイデュオも同じパターンをたどる可能性が高いと思います。つまり、これは時間が解決するタイプの調整なんですよね。急いで売らなければならない事情のない方は、少し時期を見てから動くのも十分選択肢になると思います。
ふじふじ太:そうですね。しかも今は外部環境も重なっていて、アメリカ・イラン戦争の影響で投資家の動きが一旦止まっている。需要側が様子見モードに入ったところに供給のピークが来てしまった、というタイミングの問題が大きいです。あまりにも安いと、弊社で買いたいなって思う物件すらあります。
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買い手側の温度感
ふじふじ太:現場では「もう少し需給が落ち着いてから決めたい」という慎重な買い手さんも増えています。新しい情報が多い局面なので、判断を急がない方が増えているという印象です。
のらえもん:そういう時は、どうアドバイスされてるんですか?
ふじふじ太:有明あたりもご案内します。坪単価の水準が近いので、選択肢として並べやすいんです。エリアを代表するシティタワーズ東京ベイで坪700万円ぐらい。ブリリアシリーズで坪600~650万円くらいでしょうか。一方でスカイデュオも、最近だと坪650万円前後の募集がちらほら出てきています。新築未入居の中央区物件がこの価格水準(=江東区の築10~20年物件と水準が同じ)というのは、歴史的に見てもかなり珍しいんですよ。
のらえもん:晴海には、名作マンションである晴海3兄弟、クロノレジデンス、ティアロレジデンス、パークタワー晴海もありますね。
ふじふじ太:ええ、エリア内で比較されることも多いです。駅距離も決して近いとは言いづらい立地条件なので、坪単価が接近してくると買い手さんは当然並べて検討します。晴海で今狙い目に見えるのは、むしろ晴海フラッグ板状棟かもしれません。板状は坪単価500万円台で買えるものも増えてきました。
のらえもん:晴海フラッグの板状は、もともと新築未入居が坪400万円台で出てきて、1年かけて在庫がはけていって、いまの募集は600万円台が中心になりましたね。
ふじふじ太:総じて感覚としては、晴海フラッグについては大体半年~1年前の相場に近い水準に感じます。
のらえもん:1年前の相場に戻っただけ、と考えれば、新築で買った方は基本的に誰も損をしていないんですよね。これは大事なポイントだと思います。2024年問題として心配されていた「入居組の一斉売却で暴落」という話は起きなかったわけですし、今回の動きも構造的には一時的な需給のずれです。
ふじふじ太:そうですね。ただ、いま在庫が多いのは事実なので、売却の期限がある方からどうしても価格調整が進みやすい局面ではあります。
売り急ぎの背景にある事情
のらえもん:価格調整を急いでいる方は、どういう事情の方が多いんですか?
ふじふじ太:住み替え先にすでに引っ越し済みの方が中心ですね。スカイデュオへ引っ越して、旧宅の売却期限が残り少ない、というケースです。ダブルローンの関係で、銀行から売却期限を半年と設定されていることが多いんです。たとえば引っ越してから3ヶ月経っていたら、残り2-3ヶ月で売却しなければいけない。賃料収入が取れるわけでもなく、ダブルローンで負担も大きい。そこに外部環境の変化も重なると、価格を下げて決着をつけざるを得ない。事情のある方が一定数いらっしゃる、という話ですね。
のらえもん:そこに戦争が起きた。消費者マインド指数が3月で下がりましたね。
ふじふじ太:3月は急落でした。消費者心理がそこまで落ちている時期に売り切ろうとすると、売主さん側が条件を調整せざるを得なくなる。でもこれは、晴海フラッグそのものの問題ではなく、タイミングの問題なんですよ。
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回復シナリオ
のらえもん:回復はどうですかね。
ふじふじ太:戦争次第ですね。外部環境が落ち着けば、消費者マインドも戻ってきます。コロナ後のような爆上がりではなく、投げ売り的な動きが収束して相場に戻っていく、というイメージです。需給のずれが時間で解消されていくと、価格はちゃんと戻ります。
のらえもん:僕もいろんなシナリオを考えていて。いま、AIバブルでアメリカの株価が相当高い水準にあります。もし戦争の影響でAI向けGPUをTSMCが作れないとなると、株価に波及して日経平均にも影響が出るかもしれない。株価と不動産は遅効性の相関があるので、そこは注意しておきたいところです。
ふじふじ太:もしのらえもんさんのおっしゃるとおり、AIバブルが弾けてしまったら、日経平均と不動産価格は相関0.93-0.94と言われるくらいの正の相関なので、影響は出ざるを得ないですね。一方で、金利が上がりすぎて中小デベの資金繰りが悪化する、というシナリオも考えられます。ただ都心部、特に湾岸に関しては、中小デベの供給がほとんどないので、そのルートの影響は限定的だと思っています。
のらえもん:湾岸は中小デベ物件の供給はないですね。
ふじふじ太:湾岸の中古現場を見ていても、金利上昇による買い控えは思ったほど起きていないんですよ。「予算を少し抑えようかな」という方はいらっしゃいますが、「自分で何とかします、株で稼ぎます、賃上げで吸収します」という方も一定数いらっしゃいます。
のらえもん:日本で一番高給が得られる土地が丸の内・大手町だから、そこに通える湾岸は購買力の面でやっぱり強いんですよね。
ハウジングパラドックスと、引き渡し延期リスク
ふじふじ太:ハウジングパラドックスという現象があって、金利が上がるのに価格も上がる、というものです。先進国で観測されていて、湾岸でも確かに起きています。背景にあるのは、金利上昇が需要を前倒しさせる効果。「金利が上がるなら今のうちに買わなきゃ」となる。知人でも、住宅ローンの5年ルールとの兼ね合いで「早く引き渡しを受けてキャッシュフローを固定したい」と急いだ方がいました。さらに、中小デベが潰れるほどではない微妙な利上げだと「建てない」という選択になる。新築供給が減れば中古にお金が流れて中古価格が上がる。金利上昇が必ずしも価格下落に至らないという構造です。
のらえもん:これから(収録は4/10)フォースマジュール、つまり不可抗力宣言があらゆる業種で増えて、引き渡し延期が連発する可能性もあります。資材の確保が以前より難しくなっている。塩ビ管、サッシ、衛生設備が揃わないという話も聞きます。そうなると、すでに建っている築浅物件や、大規模修繕済みの物件の価値が相対的に上がってくる。タワマンの大規模修繕は、見積もりを取るたびに上がっている状況ですからね。
ふじふじ太:大規模修繕を直前に終えた物件、そして晴海フラッグのような超築浅物件は、今の時点では相対的に有利なポジションにいますね。
半年後の天気予報
のらえもん:半年後の晴海の天気予報は?
ふじふじ太:戦争は半年以内に落ち着いていると見込んでいます。その前提で言うと、半年後の晴海は、、雨は上がっているといいですね。そこから曇りになって晴れるまでには、在庫が整理されるのに1-2年は見ておいた方がいいかな、という感じです。
のらえもん:需給で言うと、「晴海フラッグ欲しい欲しい」と言われていた時期の在庫はどれくらいだったんですか?
ふじふじ太:実は2024年後半から在庫自体は増え続けていたんですよ。ただ、相場を下回る価格で売る方がいなかったので、需給が圧迫している感じは全くしなかった。2025年9月頃までは、データより現場感で言うと買い圧力が強かったです。相場で出せばすぐ決まっていた。それが10月、11月あたりから流れが変わってきた、という時間軸です。
のらえもん:つまり、晴海フラッグの価値が下がったという話ではなくて、外部環境と売却タイミングが重なったことによる一時的な需給のずれということですね。先ほど述べた横浜の事例が顕著ですが、棟内で売り物件が多い状態では思ったように売却は進まないけど、時間が解決していく。急いで売らないといけない事情がない方は、無理に今動く必要はないと思います。戦争が落ち着いて消費者マインドが戻れば、相場も一緒に戻ってきます。
ふじふじ太:本当にそうですね。世界が平和でありますように、と願うばかりです。
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それでも湾岸を、晴海を、選ぶ人たち
ふじふじ太:今でも湾岸を選んで買われる方はいらっしゃいます。うちも先月3件、今週も2件契約があります。そういう方は、「結婚しました」「子供ができました」とライフプランに沿って家が必要になった方。湾岸エリアが好きだから、このエリアに住みたいから買う、という動機の方です。賃貸より長く住む前提なら経済合理性もある。本質的な需要はしっかり存在しているんです。
のらえもん:この2-3年、「のらさん!儲かるマンション買いたいっす!」みたいな相談が多かったですが、最近はどうですか?
ふじふじ太:「買ってから3割増しになる物件はどれですか」「AとB、どっちが値上がりますか」みたいな相談がこの2年はめちゃくちゃ多かった。それが今、ほぼなくなりました。むしろ今の方が僕は楽しいんですよ。儲けるための家を一緒に探すよりも、新生活を送るための家をポジティブな理由で一緒に探したい。それが仲介の本来の役割だと思っています。
のらえもん:僕もね、のらえもん活動をだいぶサボっていましたが、こういう局面こそ、ポジティブな情報発信をしていくべきタイミングだと思っています。今年は情報発信を増やしていく1年にしたい。晴海フラッグについて、ネガティブなマスコミ報道は多いですが、実際に住んでいる方の満足度は総じて高い。みんな満足しているといっていい。だいたい、棟対抗で運動会ができるマンションなんて日本でほとんど無いはず、それくらい愛着を持ってすまれている方が多いですね。晴海に限らず湾岸エリアの価値は本質的な部分で揺らいでいないと思っています。
のらえもん:今日は晴海が「雨模様」という話から始まりましたが、結論としては、これは需給のタイミングによる一時的な調整で、時間が解決していくもの。急がなくていい人は待てばいいし、ライフプランで必要な方は今が落ち着いて選べる局面です。我々は湾岸エリアにポジティブな情報発信を、それぞれでやっていきましょう。
ふじふじ太:はい、そういうことで! 本日はありがとうございました。
■前回ののらえもんさんの記事
知ってた?晴海フラッグが建っている場所は、ずっと「世界へ広がるTOKYOの玄関口」だった!
