晴海フラッグの他にない特徴の一つに、「国内で初めて本格的な水素インフラが導入されたマンション」ということがあります。ですが、専用部においてそれを意識することはほとんどありません。各戸はガスコンロと給湯用のエネファーム(家庭用燃料電池)が標準搭載されていますが、届けられるのは一般的な都市ガス。水素のために便利・お得なことはない代わりに、特別な装置が必要だったり、ガス・電気料金が他と異なったりといった不便なこともありません。
では水素インフラは晴海フラッグの暮らしに何の影響があるのかというと、共用部です。水素インフラは清掃工場の東側に位置する「東京晴海水素ステーション」を拠点にPORT、SEA、PARK、SUNの各ビレッジにパイプラインでつながれています。各ビレッジに各6台、計24台設置されているのは純水素型燃料電池発電設備です。これらが水素を使って発電し、共用部の電気の一部として利用されます。
燃料電池とは水の電気分解と逆の要領で、水素と空気中の酸素から電気をつくる設備です。発電の段階で地球温暖化で問題になる二酸化炭素(CO2)を排出しないため、将来のカーボンニュートラルに貢献します。
燃料電池は電気と同時に熱を発生します。これを生かしてPARKビレッジD棟の1階には住民が利用できる足湯ラウンジが設けられています。マンションに足湯というのは他になかなかない特徴ではないでしょうか。住民ならICキーによる認証により、予約なし・無料で利用できます。
筆者が訪れた際には、若い男性1人が足を浸しながらリモートワークをしているようでした。筆者もつかってみましたが、水のせせらぎを聴きながら体を温められ、リラックスできてなかなかよいものと感じました。ラウンジのオープン時間は12月20日まで8:00~22:00。足湯は平日は9:00~12:00、土日祝日は9:00~17:00に利用可能です。
このほか、各棟1階に設けられているペット用シャワーの一部にも燃料電池の熱が使われているそうです。こちらは足湯よりはぬるい温度ですが、水が苦手なワンちゃんの気持ちを少し和らげる効果が期待できます。洗ったり拭いたりしてあげる飼い主さんにも、ちょっとうれしい心遣いですね。
水素インフラと大型燃料電池は、商業施設のららテラス向けにも整備されており、その電力の一部を賄っています。普段の買い物や医院などの利用などで少しずつ地球環境に貢献できるといえます。
「東京晴海水素ステーション」はENEOSのサービスステーションと一体運用されており、FCV(燃料電池車)などに水素を充塡(じゅうてん)できます。FCVは航続距離に優れ環境に優しい次世代車である一方、水素充塡できる拠点がまだ少ないことが普及のネックになっているといわれます。ですが、これだけ身近にステーションがあれば、マイカーにFCVを導入する選択肢も現実的になってきます。
水素の技術的な詳細などはセブン‐イレブン晴海店2階に常設されている「晴海エネルギーヴィレッジ・ギャラリー」でパネルや映像による展示が無償で観覧できます。13:00~16:00まで開館しており、原則年中無休ですが不定期で休館しているようですので、ウェブでご確認の上、訪れてみてください。
■前回の晴海のアルパカさんの記事
「最終バスを逃したらどうするか問題」を考える