皆さんはクラフトビールを飲んだことはあるでしょうか。比較的小規模な醸造所(ブルワリー)で、職人が各自の技術と手間ひまをかけてつくる個性あるビールを指します。大手はあまり手掛けていない、ホップの苦みの利いたIPA(インディア・ペール・エール)や、小麦を原料とし独特のバナナのような芳香のヴァイツェンなど、店ごとの味が楽しめます。もともと米国で広がった文化ですが、コロナ禍を経て日本でもファンが増えています。
そうした店は飲み屋街や観光地にあるケースが大半なのですが、晴海フラッグ内には珍しいことに集合住宅内に出店しているクラフトビール店「柴田屋酒店晴海」があります。さらに珍しいことに店内に醸造設備を備えており、まさに「晴海生まれ」のビールが飲めます。今回はその魅力と今後の展開についてリポートします。
お店は晴海フラッグのほぼ中心といえるパークビレッジCの1階。飲食とお酒の物販を兼ねており、入ってまず醸造タンクが目に付きます。多くのクラフトビール店は専用の醸造施設と飲食店を別に設けていることが多いですが、設置面積を取ってまで店内醸造するのには狙いがあります。運営会社のSAKE-YA JAPANでマネージャーを務める本部大悟さんは「そこの店だから、そこの職人さんだからと買い求めたくなる『街のパン屋さん』『街の豆腐やさん』のような存在を目指しています」と話します。
常時8つのタップ(注ぎ口)をそろえており、現在はそのうち5種類が店内で醸造したものです。そのうち「まず味わっていただきたい」のが定番の晴海FLAG GOLD。すっきりとした味わいとフルーティーな香りで、乾いた1杯目の喉にもってこい。いろんな食事メニューに合います。ビールはワンサイズでいずれも一杯880円。さまざまなブリュワリーで飲み歩いてきた筆者ですが、味・コスパともに申し分ない水準と思います。
地域に醸造設備を持つ強みを生かして、コラボビールも開発しています。ブラウンエール「晴海五丁目」は、レシピを地域住民とともに考えて醸造した逸品。10月のハロウィンイベントに合わせて開栓し、祭りの盛り上げにも一役買いました。
フードメニューはソーセージやフライドポテトなどビールによく合う定番がそろえられていますが、アレンジも利いており唐揚げは油淋鶏風、スイートチリ、ゆず胡椒マヨネーズと3種類のソースをディップでき、人気商品です。
本部さんにおすすめをうかがったところ、まず挙げられたのが前菜の盛り合わせ(1260円)。シェフがその季節にふさわしい食材でお酒との相性も考えて組み合わせているといい、取材時はテリーヌ、キャロットラペ、かぼちゃとクリームチーズのムースの3種でした。どれもおいしいのですが、塩味、酸味、うま味のバランスがよくビールが進みます。
もう一つが牛すじの煮込み(980円)。大根にもよく味がしみており体が温まります。中国のスパイス「五香粉」が添えられており、好みによりふりかけることができます。本格的な香りでエスニック好きの筆者にはたまらない味でした。タップとメニューは季節により入れ替えており、行くたびに違う味が楽しめるよう工夫をしています。
ビールに並ぶ売りがワインです。ずらりと様々な産地、様々な銘柄の自社輸入ワインが並びます。筆者のようなワイン素人には少し腰が引けそうですが、店内飲食や自宅の料理とよく合うものを尋ねれば答えてくれます。通常、飲食と物販を兼ねる店は、店内で飲む場合に別途「開栓料」を払うところが多いのですが、そうした負担はなし。ミシュラン星付きレストランも仕入れている銘柄も含め「酒屋価格」で飲めます。
食事はパスタやごはんもの、デザートも充実しています。子育て層の多い晴海フラッグ。家族で外にちょっと良いビールやワインを飲みに行くのはなかなか難しいですが、子どもの口にも合うメニューがあるのはうれしいです。店内は映像を映し出せる大型スクリーンを備えており、結婚式の2次会や忘年会、スポーツチームの打ち上げなど貸切利用も歓迎とのことです。
今後は、家庭や晴海フラッグのパーティールーム向けに、テイクアウトやケータリングの提供を強化する方針です。予算に合わせたメニュー提案もしており、これからの季節のクリスマスパーティーなどにちょうど良いですね。
筆者が気に入っているのは、お店のオリジナルのグラウラー(専用の容器)を購入すれば、店内で5000円以上の飲食をすると無料で好きなビールを詰めて帰れるというサービス。なかなか太っ腹ですが、「お店がある限り続けていきたい」と本部さん。
晴海フラッグに出店したのは、区画の面積や造りがイメージする店舗にとって「使いやすい」環境であったことや、会社として「新しくできる街に参加する」というチャレンジに魅力を感じたからだと話します。「新しい街に最初からいるというのは特別なこと」(本部さん)。これからも地域とともに成長を図っていく考えです。
「クラフトビールやワインをあまり飲んだことのない方にぜひ一度お越しいただきたい」と話す本部さんに、はるみライフ+読者の皆さん向けに耳寄り情報をうかがいました。12月6日から年末まで人気のワインをセットにした「福袋」の売り出しを行い、中には通常の半額程度で提供するものも。
年明けからは平日のランチ営業を開始。リモートワーク中の食事の選択肢が広がりそうです。現在の夜の営業時間は午後10時までですが筆者が「もう少し遅くまで開いているとうれしいな」と話すと、本部さんは「タワー棟の入居開始や公共交通のダイヤ充実などの環境を踏まえて考えていきたい」と応えてくれました。これから街と柴田屋酒店が共に成長することに期待です!
柴田屋酒店晴海 晴海ビール醸造所
〒104-0053 東京都中央区晴海5丁目6−3 1F
営業時間 火~金 午後3時~午後10時
土・日 午前11時半~午後10時
(価格、メニュー名、営業時間は2024年11月取材当時)
■前回の晴海のアルパカさんの記事
晴海の水素のある暮らしって実際どうなの?